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ハルジオンとヒメジョオンの違いー『大事なことは植物が教えてくれる』試し読み③

ベストセラー『生き物の死にざま』の農学博士が描く、静かにしなやかな植物の生きざま。アシのように風をかわし、ナズナのように冬を耐え、花咲くときはハルジオンのように上向いて。『大事なことは植物が教えてくれる』(稲垣栄洋・著)より試し読みです。

ハルジオンとヒメジョオンという似た名前の雑草があります。名前だけでなく姿も似ていて、二つの種類を見分けるのはなかなか大変です。
一方、ハルジオンは漢字で「春紫苑」と書きます。春の紫苑(シオン)という意味です。ヒメジョオンは、「姫女苑」と書きます。ユーミンこと松任谷由実さんの名曲 に「ハルジョオン・ヒメジョオン」がありますが、じつは「ハルジョオン」は正確には誤りです。響きをそろえるためにヒメジョオンに合わせてハルジョオンとしたのでしょう。

語呂に合わせて植物名を変えてしまうことは、ときどきあります。 「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ」と、竹久夢二はマツヨイグサをヨイマチグサ(宵待草)と記しました。これも宵待草の方が語感が良いと感じたからな のでしょう。

さだまさしさんの曲には「春女苑」というタイトルがあります。これは春紫苑なのでしょうか。姫女苑なのでしょうか。歌詞の中に、そのヒントがありました。

画 中上あゆみ

じつはハルジオンとヒメジョオンは見た目がよく似ているものの、大きな違いがあります。ハルジオンは多年草で、ヒメジョオンは一年草という点です。一年草のヒメ ジョオンは種子を残すものの、今年咲いたからといって、翌年同じ場所に生えるとは限りません。環境が変われば種子は芽を出さないのです。これに対して、多年草のハルジオンは冬になって地上の茎や葉が枯れてしまっても地面茎が残ります。そのため、 同じ場所に「また咲く」のです。

さだまさしさんの「春女苑」の歌詞を読むと、「春女苑」は今年もまた咲く、必ず咲くと書かれています。つまり植物学的に判断すると、ここで歌われているのは、ハルジオンの可能性が高いのです。

ハルジオンは乃木坂46の「ハルジオンが咲く頃」にも、BUMP OF CHICKENの「ハルジオン」にも、UVER worldの「ハルジオン」にも歌われています。よく歌われるのには理由があります。

ハルジオンはつぼみのときにはうつむいていて、咲くときに上を向きます。うつむいているつぼみが、上を向いて花を咲かせるので、まるで落ち込んでいる誰かが力強く踏み出すように見えるのです。ヒメジョオンはつぼみも上を向いているため、つぼみを見ればハルジオンとヒメジョオンを区別することができます。

うむいたっていい、くじけたっていい、落ち込んだっていい。でも、咲くときは上を向いて咲く。ハルジオンはそういう花なのです。

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