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お墓の前で過ごす時間は悪くない(「大竹まこと ゴールデンラジオ!」より)

文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」の「大竹メインディッシュ」に生出演された糸井重里さん。小堀鷗一郎さんとの共著『いつか来る死』についてお話しくださったその模様をダイジェスト版にてお届けします(12.14O.A)。

いつか来る死カバー表1

大竹 ようこそいらっしゃいました。『いつか来る死』というご本の中身を中心にお話を伺いたいと思います。糸井さんは現在72歳?

糸井 なりました。同じような歳です。

大竹 今度のご本は自分の死についてですけど、バカというか、自分も死ぬんだろうけど、なんかそういうことを普段あまり考えていないというか、考える時間がない。

糸井 身近に死があったときに自分もって思うことが多いかなって思うんですけど、ぼくは友達が死んでいくようになったので。同い歳くらいの人も死ぬし、もっと上の人はもっといきますし、若い人も混じったりする。そうするとやっぱり自分はどうだろうというのをその時をきっかけに一回ずつ余計に考えるようになります

大竹 糸井重里さんがどんな人か知ってる?

阿佐ヶ谷姉妹・姉(渡辺江里子) もちろん存じ上げてます。言うのがためらわれたんですけど、私、小学校の卒業文集で将来なりたい職業にコピライターって書いたんですよ。本当にお恥ずかしいんですけど。その時に頭の片隅にコピーライターの理想像として糸井さんのお姿があったかと思うんですよね。

糸井 ほんとですか?

阿佐ヶ谷姉妹・江里子 お友達と被りたくないというのがあって、かっこいい職業を選ばせてもらって。小学校6年の時の方がずっととがっていた。

大竹 そのあとちょっととがったバンドもやったんだよね。

糸井 そうですか。

大竹 美穂さんは? 何もなければ何もなくていいのよ。

阿佐ヶ谷姉妹・妹(木村美穂) トトロのお父さん役の声をされているので、あの時は衝撃的でした。

糸井 「草壁です」。これで子供には受けてるんです。

大竹 糸井さんの「おいしい生活」とか、名コピーは知ってるの?

阿佐ヶ谷姉妹・美穂 もちろん知ってます。

大竹 コピーライターという職業はその当時なかったでしょうね。

糸井 いや、あったんですよ。あったんですけど、たまたま言葉で広告を作っているんだなっていうのを認識する時代だったんで、僕らがやりやすかったから出てきたんだと思いますけどね。大昔から「ゴホン!といえば龍角散」だとか、誰かがやっていたわけで。それを、「おいしい生活」みたいなもので、見えるところでキャンペーンをやるようになったのが僕らのときだったので。

大竹 私はテレビなんか見ていたり、コピーライターのお仕事をされたりして、いろんなことをなさっているじゃないですか。ある時はコピーライターで、あとは徳川埋蔵金でしたっけ。テレビの企画でどこかに埋蔵金があるんじゃないかって。その後には震災があって、あれは。

糸井 気仙沼ですね。

大竹 セーターを作る会社をやってらした。

糸井 そういう会社もやりましたね。

大竹 その前後が60歳くらいですか。会社を作られたのが50の時。

糸井 「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」という、インターネット上のサイトを作って。

阿佐ヶ谷姉妹・江里子 おしゃれな方とか、ちょっと先を見据えている方がほぼ日ほぼ日と言ってるのを聞いて、かっこいい人たちはほぼ日って言葉を自然に操るように使うんだなって憧れがありました。その先頭にいらっしゃるのが糸井さんということで存じ上げておりましたけれども。

諦観の練習をしていたのかもしれない

大竹 本の中で諦観みたいなものを感じてらっしゃるという箇所があったんですよね。

今思うと、ぼくは若い頃から諦観の練習をしてきたのかもしれない。練習というのは、自分に対して「それ以上はおもしろい?」と問いかけること。仕事にしても、人間関係にしても、やりすぎると「おもしろくない」ところまでいってしまうんです。(『いつか来る死』p.66より)

と、こうあります。いやいやいや、はたと気がつくことがありますな。これはやってみてわかったこと?

糸井 そうですね。何をやっても、ある種、原理主義みたいにやっていくとマッチョ化していくんですよね。例えばお茶のボトルを集めるのも、集め始めは面白いんですけど、対抗馬が出てくると「俺の方が持ってる」ってなって、お茶が美味しくなくても買うようになる。やがては住むところがなくなっちゃうくらいまで集めちゃうみたいな。

大竹 このあと出演する森永卓郎はまさにそのタイプですよ(笑)。

糸井 アイデンティティの形骸化というか、見える形にしていきたくなっちゃうのを突き詰めると面白くなくなっちゃう。なんのために始めたんだっけ? が抜けていくのがあって。若い頃からしょっちゅうそれに気づくタイプだったんです。

大竹 友達なんかもそうですよね。変な話だけど、こいつ面白いなって思うわけです。そいつのことを知りたくなってしょうがなくなって、いつも一緒にいると、いすぎてだんだん憎たらしくなってくる。最後にはこいつの一挙手一投足が腹立たしくなる。あれ、やりすぎたからですね。

糸井 そう思いますね。大体のこと、そうですよね。ある程度、距離を取るだとかっていうのを、お互いに約束事として上手に、破ってもいいくらいの約束事として、持っていた方がいいんだろうな

大竹 そういうふうな友達がいたとしたら、どうするんですか?

糸井 そういう関係もありますけど、どっちも同じようなこと考えているんですよね。割に自然に少し距離を持ちますよね。毎日つるんでる友達とか、その時代ごとにいますよね。それはそういう「いい友達」としてリスト化されてるんじゃないですかね、お互いに。明日明後日いるかって言ったら、違うことで会わなくなる理由がまたあるんですよね。一人が結婚しちゃったとか。だから案外バランスが取れていくんだろうなって思いますけど、一人で決められることは危ないですね。

大竹 なるほど。

糸井 友達とかだと両方が飽きるけど、一人のことは、さっきの「趣味」のこともそうだし、「考え」でも、原理主義みたいなものはそっちですよね。

寄り添えないのが普通の人間

大竹 もう一つ突っ込ませていただくと、糸井さんはいろんな浮世のことをちょっと遠くから面白がってるだけみたいな感じもちょっとするんですけどね。

糸井 この本の中でも小堀先生とそのあたをり語っていますが、寄り添える人っていうのはあんまりいないんですよね。例えば死に至る患者さんに寄り添えるっていう医師が、番組とかでは注目されるけど、そんなこと出来るお医者さんは、小堀先生が見た限りでも二人くらいしかいない。自分はそうではないと小堀先生は言っていて。寄り添えないのが普通の人間なんだとしたら、その寄り添えない人間がどうすればいいのかを考えるのが自分の仕事じゃないかっていう言い方をしている。人間観が落語的なんですよね。なんでもできる人が住んでるのが社会じゃないので。長屋の人物たちの約束事みたいにしていくのがいいんじゃないかなっていうのが、僕が考えていることと、小堀先生がおっしゃったことが似てたのかなって思いますけどね。

大竹 無理を押して、世の中にはある程度面白いこと、楽しめること、ボランティア的な自分の心、いろんなのがありますよね。あんまりそこに嘘をついていくと苦しくなりすぎちゃうという風に考えていいですか。

糸井 どこかで突っ張るというのが一つの美意識だし、生き方なんだけど突っ張り切ってて誰も得しないというか、誰も喜ばないところに行っちゃうことが僕は嫌だなって思う。

友達のお墓の前に行く時間

大竹 よくお墓に行ってらっしゃるとも書いてありますね。亡くなった方のお墓の前に行って、その方は糸井さんが尊敬してる方で、心に穴が空いたようになっちゃって、どうしようもなくてお墓に行っちゃうと書いてありましたけど、その墓で何するんですか。

糸井 ただいるんですよ。行くって決めてると、そこの予定のところがちょっと自分が気持ちいいんです。だから自分のためですよね、完全に。行ってお花添えて、お線香あげて。なんとなく言うことを思い出したりしてると、それで気持ちいいんですよね。で、じゃあって言って帰るんですけど。それだけなんですけど。

大竹 いろんなこと全部自分のためですよね。いろんなこと。人のためとかじゃなくて。

糸井 自分のためです。

大竹 自分が死ぬまでどう自分を、ちっちゃなエリアの中で過ごしていけるかという、そういう話と思っていいですか。違いますか?

糸井 そうでもなくて。縁があった場合には、全く関係なくてもお手伝いしますよね。たまたまかもしれないし。それは自分で決められることじゃないんじゃないかなって思ってます。ゴッドファーザーみたいな映画を見ても、あんなに悪い人たちでも、家族に対する愛情ってすごいじゃないですか。だからそれが狭い人は悪い人と思われて、広ければといいと言っても、奥さんを蹴っ飛ばしていたら何にもならないわけで、縁なんだろうな、自分で決められないことなんだろうなって僕は思っていますね。

阿佐ヶ谷姉妹・江里子 美穂さんとこの本について話をしたんですけど、一番美穂さんが印象に残ったところどこだったって聞いたら、お墓って言ったんですよね。

美穂 私は散骨にしようかと思っていたんですけど、お墓があった方が寄り添えたりしていいんじゃないかなと思って、お姉さんちの隣にお墓を移して隣同士にするのがいいんじゃないかなって。

大竹 お姉さん先に死ぬからね。

江里子 私先に死ぬ前提になっちゃって。

美穂 多分そうですね。

江里子 多分そうですね、じゃないでしょう。一つしか違わないんだから。

美穂 お墓を隣にした方がいいんじゃないかって考えたのが、この本を読んで初めて気づかされましたね。

大竹 僕もお墓のところ気になってね。なんで行ってるのかなって。

糸井 確かにね。僕もそうするとは思わなかったですよ。お墓について、ずいぶん前に話したことがあって、生さぬ仲の男女のお墓が隣同士にあるんだけど、別に作られていて、下でつながっているっていうのがあるんですよ。家族がお墓に入るものだから、その関係だと家族じゃないんですね。でも下をつなげてあるというのがあって。いい話だなっていうか。

大竹 よく隣に建てましたね。

糸井 そうね。昔だとね、お妾さんとか2号さんとかいわれる存在があったから、家族は知ってる関係だったんですかね。

大竹 今はそういうのダメと言われているけど、昔は社会構成上必然ですからね。あと僕が気になったのは動物が死んだ時に、他の動物が寄り添ってくれるっていうところ。死んだって遠くから見に来るっていうかね。魂を感じに来るというか。人間も動物だから。

糸井 基本にあるんじゃないかな。死んでた場合に、その動物の仲間でどうするって問題があると思うんですよ。例えば腐っていく場合には病気に弱くなるわけだし、あるいは他の動物がそれを目がけてきたら自分たちの群れが危ないとか。そういうのがある程度組み込まれているからじゃないかなとは思うんですけど。でも生きてたもんが死ぬというのを確かめたくなるのは確かでしょうね、少なくとも。犬でもよく寝てるとなめたりしますよね。ちょっと確かめてる感じがある。

大竹 うちもさ、夜中に猫がさ、俺の首筋のところまで来てガーガー鳴いてるんだけど、俺死にかけてるの? 俺は猫が死にかけてるって心配でしょうがないのに。昨日は頭と顔踏んづけられたんですけどね。

糸井 若い人にはしないんじゃないですかね。

大竹 糸井さん、(俺)一つ下、一つ下。

糸井 70過ぎてますからね(笑)。

「お願いされる」=「生きててください」

大竹 あとあれだよね。必要とされなくなることについてお書きになられてますね。必要とされなくなることは死ですよね。

糸井 寂しいですね。だから求められるということは、求める以上にその人を生かしているんだなって思いますね。お願いされるということは生きててくださいってことなので、それは素晴らしくその人を生かしてるんだなって年を取ってから思いましたね。

大竹 それは「金貨してくださいよ」でもそうですか?

糸井 そうですね。

大竹 えー!

江里子 どなたを思い浮かべているのか。

大竹 いやいやいや。「金貸してください」も存在意義に入るか。

糸井 金だけで来たのかなって思われたら、あなたは求められていないってことですよね。金だけが欲しいわけだから。でも、あなたにお願いしたいということが通じた場合は、金だけではない。

大竹 でもそいついろんなやつにお願いしてるよ。

糸井 「そいつ」がいるんだね。

大竹 お前のところにも来たか、みたいなやつ。

糸井 仙台四郎が仙台の街で大事にされてるじゃないですか。ご飯をもらいに来る人。それを祀っていたというのは、仙台四郎が来る店は繁盛する、求められている店という話だから、同じようなことじゃないですかね。

大竹 あともう一つ。ご本の中で小堀さんという方が80過ぎて医療に従事されているわけだけど、大きなお屋敷に住んでそこから車で通って、その維持費用を出すために私は働いているんだっていうのが妙におかしかった。

糸井 小堀先生はそういうところが正直で面白いんですよ。だから美談で終わらせたくない死の話というのがこの先生にあって、普通にできるようになっておかげでよかったなって思いますけどね。

阿佐ヶ谷姉妹・江里子 糸井さんは来年の春から学校を始められるそうです。どんな学校になるんでしょうか。

糸井 小さいサイズではもうこの2年くらいやってますが、もう少し広げて、2歳から200歳までとしてます。大学行かなかった人、学校行くのが嫌いだった人が、この人の話なら聴きたいという人ばかりを集めた学校をやりたいなと思ってるんです。例えば阿佐ヶ谷姉妹という先生が、私たちがコーラスの面白さに目覚めたということについての授業を例えば90分やったらって思うじゃないですか。

大竹 まあ、90分は持たないだろうけど。

阿佐ヶ谷姉妹・江里子 2歳から200歳までというそのコピーがまたキャッチーですよね。

大竹 そこに感心するか。

糸井 僕も学校とか勉強とか好きじゃなかった人間なので、でも、出てから人の話を聴くのは本当に面白いですよね。それを固めた場所を学校と言ってるので、4月から始めますけど、1月1日1時からライブで発表会をやります。

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