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俺の上には空がある広い空が。濡れ衣で29年間を獄中で過ごした桜井さんの詩

俺の上には空がカバー表1

無実の罪を43年余り背負って生きた人がいます。桜井昌司さん。茨城県で起きた布川事件の犯人の一人として逮捕され、20歳から49歳までの29年間を獄中で過ごしました。1996年に仮釈放された後、再審請求の闘いを経て、2011年ようやく無罪が認められました。43年7ヶ月もの間、やってもない罪を着せられて生きてきました。

犯人にされて自由を奪われる苦痛はとてつもなく、時に気がおかしくなりそうだったそうです。そんな時は、目を閉じて、「俺の上には空がある、広い空がある」と呪文のように唱え、深呼吸を繰り返し、自分を落ち着かせたそうです。

冤罪を引き起こした警察官、検事、裁判官を恨んではいないと断言する桜井さん。それよりも、43年余りの時間は自分にとって必要だったと言います。人に支えられ、共に闘う人たちの善意に触れるなかで、詩を書くようになり、自分の思いを伝える言葉を得ました。

齢74、一昨年癌が見つかり、余命宣告を受けた今、自作の詩と共に本にまとめました。詳細はこちらより

「強さと優しさに」(1992年3月)

苦しみに耐えた人が   
もし強くなれるのならば  
私の強さは無類だろう   
自由を縛られた刑務所の中で   
二十代を失い
三十代を失って    
今、四十五歳
ひたすらに耐えてきた二十五年   
苦しみに耐えてきた人が強くなれるのならば  
私の強さは無類だ

悲しみに耐えた人が  
もし優しくなれるのならば  
私の優しさは底なしだろう
人間の心をも断ち切る刑務所の中で  
母も失い   
今、父も失って  
何もできないままに
ひたすらに耐え続ける歳月  
悲しみに耐えた人が優しくなれるのならば   
私の優しさは底なしだ

裁判のたびに誤判が重ねられて
それでも本人はやめるわけにはいかない
負けるわけにはいかないが
私たちの真実を背負って
川の流れに砂をまくように
社会で支援してくださる人々がいる

もし私に強さと優しさがあるとすれば  
それは耐え忍んだ月日によるものではない
人間の人間として強さが  
人間の人間として優しさが  
どこにあるかを教えてくださる人によるのだ

きっと   
私に強さと優しさを与えてくれたものは   
人間の祈りと願いの力だ 


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