事件から54年。「心晴れやかとは、こんな気持ち」桜井昌司さんの闘いは続く
『俺の上には空がある広い空が』の著者・桜井昌司さんは20歳から49歳までの29年間を獄中で過ごしました。仮釈放後、再審請求の闘いを経て、2011年にようやく無罪を勝ち取りますが、警察と検察が自らの違法性について認めたり謝罪したりすることはありませんでした。桜井さんは国家賠償請求訴訟を起こし、捜査の違法性および公判活動における問題点を明らかにしようと活動を続けてきました。
そして2021年8月27日、事件から54年を経て、東京高等裁判所は一審判決を維持し、茨城県警の取調べの違法性を認めると同時に、捜査を担当した検察官の取調べについても「高圧的であったと推認できる」「社会的相当性を逸脱して自白を強要する違法な取調べであった」と、新たに検察の取り調べの違法性を認定しました。「心晴れやかとは、こんな気持ちだ」と、桜井さんは自身のブログに綴っています。
なぜ警察の取調べで虚偽の自白をさせられたか、その時のことを桜井さんは自著『俺の上には空がある広い空が』で次のように詳述しています。
ポリグラフ検査を悪用し嘘の自白を強要した警察官。東京高等裁判所の村上正敏裁判長は、判決理由としてそこにも踏み込み、弱冠二十歳だった桜井さんが受けた「心理的動揺は、非常に強いものであったと推認される」としています。
一人の警察官の卑怯な行為から始まった冤罪は、もう一人の「高圧的」な検察官と、さらにはその後何人もの(何十人もの)裁判官によって追認され、いくら2011年に無罪が認められようとも、いまだに警察も検察も自らの誤りを認めてはいません。桜井さんは「冤罪を生まないシステムを作るために、生きている限り頑張ろうと思う」とおっしゃっていました。不屈の精神です。
絶望しながら、人の優しさに触れ、人を想う心を知った。そんな生き方を全うする桜井さんの想いを多くの人に知っていただきたいです。
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