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不安で残酷な世界を生きるためにいま、やっておくべきこととは――?『日本人でいるリスク』

日本人として日本で生きていく人たちへ

僕はこれまで、著書やインターネットなどで、事あるごとに「若い人はどんどん海外に脱出すべき」と述べてきました。日本という国が、今後縮んでいくことが明白だからです。
しかし、実際に海外脱出を果たしている日本人は、ごくごくわずかです。
外務省は3か月以上海外に暮らす日本人のデータを取っており、海外在留邦人数調査統計という名目で発表しています。それによれば、2022年10月1日の時点で、長期滞在者は約75万1000人で、海外永住者は20年連続で増加し約
55万7000人になったそうです。
この永住者の数字に関して「過去最高」などという表現もされていますが、日本人口全体のわずか0・4%にすぎません。実際に、あなたの周囲を見回してみても、海外に移住した人は、せいぜい1人見つかるかどうかというレベルだと思います。
つまり、何があろうとも大多数の日本人は、日本人として日本で生きるという道を選択しているわけです。きっと、あなたもその1人でしょう。
僕はその選択を否定するつもりはまったくありません。生まれてからずっと暮らしてきた国に居続けたいというのは自然な気持ちですし、家族や仕事の関係などで海外移住が難しい人もいるでしょう。
ただ、日本で生きていくことを決めたのであれば、この国でこれからどう生きていくか、どう働いていくかについて、真剣に考えなくてはなりません。本書の目的は、そこに本気で切り込んでいくことにあります。

僕は数年前からフランスで暮らしていますが、たしかに、生まれた国、大切な人が住んでいる国を出て行くのは、そうそう簡単なことではありません。誰だって、母国に対する愛着はあるでしょう。
一方で、日本の少子化は深刻なレベルで進行しています。このことは、何を示しているのでしょう。もし、日本という国に大きな可能性を感じているなら、もっと多くの人たちが子どもを持つのではないでしょうか。
要するに、これからもずっと日本で暮らしていきたい気持ちは強いものの、将来にを覚えている人が多いはずです。
それも当然のことで、なんといってもお金の問題があります。人生100年時代などと言われても、老後資金のことを考えたら喜んでなどいられません。自分の面倒を見るのが精一杯。子どもが欲しくても、教育費を考えたら不安で産めないのが現実でしょう。
また、日本には、地震や台風などの自然災害も多く、財産どころか命さえ保証されていません。
 加えて、世界の情勢もひどく不安定です。コロナ禍、ウクライナ侵攻、大手金融機関の破綻……数年前には予想すらつかなかったことが起き、そのたびに僕たちは翻弄されます。これでは、不安になるなと言うほうが無理です。

不安なのは「知らない」から

こうした数々の不安に対し、絶対にとってはいけない悪手は「目を背けること」です。僕たちが不安感を強めるのは、先が見えないから。つまり、どうなるかがわからないままでいるからなのです。
大切なのは、ひとえに「知ること」。たとえ、それが暗い見通しであったとしても、正しく知ることで適切な対策が打てます。すべては、正しく知ることから始まります。
「暗いことなど考えたくない」と、噓で固めた明るい未来に逃げていれば、いずれ大変な目に遭います。いざ、真実と向き合わなければならなくなったときに、何も打つ手を持たないからです。
逆に、本当のことを正しく知り、最も合理的に対処できる自分がいれば、何も恐れることはありません。このとき初めて、どんな人にも明るい未来が拓けるのではないでしょうか。
本書では、日本人としてこれからの日本で人生を送るうえで、心得ておかなければならないあらゆるリスクについて取り上げ、それぞれのリスクからどう我が身を守ればいいかという防衛術を、一つひとつ具体的に述べていきます。

「今自分ができること」に集中する

そこでは、「社会保障の縮小・税負担の増加」などニュースでよく目にするようなものから、「格差の消滅により、国民総貧困に陥る」といった意外に思われるようなものまで、幅広い範囲を扱います。
いずれのテーマにおいても、防衛術は徹底的にミクロなもの、つまり個人でもできることに絞りました。あえて僕がそうしたのは、具体的に「どう行動すればいいのか」を伝えたいと思ったからです。
たとえば「税負担の増加」というリスクに対し、「国民の負担が少なくなるように、国や自治体は制度を変えるべきだ」というマクロな視点に立った意見があるのはもっともです。僕自身、その通りだと思います。
しかしながら、実際にマクロな変化が起きるまでには時間がかかりすぎます。しかも、その間にも別のリスクがどんどん降りかかってきます。
だから僕たちは、今自分ができることにまずは集中すべきなのです。税負担が増加したら、「堅実な投資をして、最低限の資産を稼ぐ」といったミクロな対応をしていくことが非常に大事です。
僕が本書で提案する防衛術は、一つひとつはとても小さなことです。しかし、そうした小さな武器をたくさん持っていることが、最終的には幸せな人生につながります。
いくら立派な武器でも、使いこなせなければなんの役にも立ちません。むしろ、持っているだけ荷物が増えて不利になります。それよりも、手軽に使える武器をたくさん持ちましょう。そして、実際にどんどん使っていきましょう。
それが、日本人として日本に生きて、明るい未来を手にする方法だと僕は確信しています。


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