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先の見えない時代、今、ビジネスの現場で「#哲学」が流行りはじめている——「#哲学シンキング」という新しい思考の潮流

みなさんは「哲学」と聞いて、まっさきに何を思い浮かべますか?

ソクラテスとかニーチェとか、サルトルとか、ああいう難しそうなやつ?

哲学者の名前は、なんとなーく知っているけれど、誰がどんなことを言ったかまではさっぱりわからない……。

それに、ビジネスと哲学って、なにか関係があるのだろうか?

ビジネスの現場で「流行ってる」ってどういうこと?

よく会社の社長が「わが社の経営哲学は……」「俺の生き方の哲学はな……」とか言ってるけれど、そのことかな?

そもそも哲学って、難解だし、日常生活に必要ないんじゃないの……?

今日は、小社より発売になった『哲学シンキング』という本をご紹介します。著者は日本で初めて「哲学専門の会社」を起ち上げた吉田幸司さん。本書が待望のデビュー作!

吉田さんは今、哲学の思考法を使って、日本を代表するさまざまな企業で、課題の発見、問題解決を行っています。

だけど、なぜ哲学? いったいどんなふうに仕事の役に立つのか?

noteでは、その疑問に答えるべく、特別にこの本の「はじめに」の24ページ分を【全文公開】してしまいます! どうぞお楽しみください。

* * *

はじめに 哲学的思考力が5年後、10年後のビジネスを動かす


「売れる商品を世に出したい。だけど、どこから考えはじめたらいいのでしょう?」

「新企画のアイデアはいろいろ出しているんですが、どれもありきたりで、そもそも『何がよいのか』、よくわからなくなってきました」

「これまでの方法で、ほんとうにひとびとの意識や価値観を調べられているのか、確信が持てないんです」

「『働き方改革』って言うけれど、何をどうしたら成功なのでしょうか?」

これらはいずれも、企業のひとたち、それも管理職やプロジェクトリーダーのひとたちが、真剣にぼくに相談してくれたことです。
世界の情勢が複雑化し、5年後、10年後も見通せないなか、企業もそこで働くひとたちも、自分たちが進むべき道を本気で模索しています。
若いひとたちだって、いっしょです。

「もうすぐ就職活動だけど、将来、自分は何をしたいのかわからなくて……」
「まわりのみんなはどんどん成長しているけど、どうやったらあんな知識や経験を身につけられるんですかね?」
「この2、3年楽しかったけど、いまの仕事を、ずーっと続けていいのでしょうか?」

これらは、大学の生徒や卒業生から受けた相談です。
ぼくは大学で教鞭をとっていますが、250人が受講している授業で「なにか悩んでいることがあったら(毎回授業の終わりに集めている)アンケートに書いていいよ」と言ったら、翌週から数十件もの、相談ごとが殺到。
以後、ぼくの授業の冒頭は「人生相談コーナー」になっています。
みんな、ふだんは口に出さないけれど、じつはいろんなことで悩んでいるんですよね……。

ともあれ、年齢も、性別も、職業も違うなか、企業のひとたちにも大学生にも共通していることが、1つあります。
それは、「どこに答えがあるかわからないような問題、どうやって考えたらいいんだろう?」ということ。
そもそも「考え方」がわからないという点です。

なぜ哲学が「使える」のか?

博士号を取得したのち、研究者として堅実なキャリアを突き進んでいたぼくは、あるとき一念発起して、世の中でもっとも役に立たないものの代名詞を事業内容に、株式会社を設立しました。

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「??? これが売り物になるの?」と思われるのも無理はありません。

一般的な哲学者のイメージは「大学のなかで難解な議論を戦わせている浮世離れしたひとたち」……という感じでしょう。
にもかかわらず、いまやぼくたちは「リクルート」「ライオン」「パルコ」「パーソルキャリア(doda)」……などなど、日本を代表する大手企業のプロジェクトで、ワークショップや専門的なコンサルティングを実施し、哲学を“納品”しています。

いったい何をしているのか?
どうして、いま、日本の企業が「哲学を求めている」のでしょうか?

よく、ビジネスの現場では、

「そんなこと、ひとに聞かないで、自分で考えろ!」
「誰かに言われないでも、自分の頭で考えて行動しろ!」

こんなふうに言う人もいます。でも、「自分で考える」って、どうやったらいいのでしょう?

たとえば、「人生に意味はあるのか?」という問い。
こんな「哲学っぽい問い」を前にしたら、多くのひとは、ただただ途方に暮れてしまうのではないでしょうか?
考えてみようとしても、モヤモヤ、グルグル思考が空回りするだけ。
どこからどうやって考えたらいいのかさえわからず、スタート地点にすら立てない。
なかには「そんな問いに答えなんてあるわけがない」「考えても仕方がない」「そんなこと考える暇があったら、さっさと仕事したほうがいい」と、なかば腹を立てつつあきらめるひとも、きっといるでしょう。

では、次のような問いはどうでしょうか?

「生活者は、何に究極的な価値を見いだしているか?」
「ひとびとを魅了する斬新な企画とは、どんな企画か?」
「みんなが働きやすい平等な職場とは?」

いずれの問いもビジネスにかかわる本質的な問いですが、みなさんなら、これらの問いについてどのように考え、どんな答えを出しますか?

おそらく「ただ1つの正解」など存在しないでしょう。
だからといって、「モヤモヤ」にフタをし、思考を放棄してしまってもよい問いでしょうか?

実際の現場の問題はもっと複雑で、深刻かもしれません。

「生活者の隠れた本音を引き出せ」とトップダウンで言われたけれど、たいした成果が期待できないと思っている「お決まり」の方法で調査するしかない。

「ひとびとを魅了する斬新な企画を立案せよ」と社命が下ったが、「見せかけ」のものでしかなく、何が本質を突くコンセプトなのかわからなくなっている。

「ジェンダー平等で、みんなが働きやすい職場を実現せよ」というものの、よかれと思ってした提案は面倒がられ、売り上げや作業効率を落としてはいけない制度や雰囲気がある。

不条理とも言えるこういったジレンマが、みなさんのまわりにも1つや2つ、あるのではないでしょうか?

いま、ビジネスの現場では「すぐに解決策が出せない問題」や、「問題が複雑にからみあい、何を課題として設定すればいいのかわからない問題」が、山積しています。
「問題解決」が必要であると同時に、これを実行すれば問題は解決すると確信できるような「課題発見/設定」が必要とされているのです。

この本で紹介する「哲学シンキング®(哲学思考)」は、ビジネスや日々の現場で現れる、さまざまなモヤモヤの糸をひもとき、思考を前に進めるためのメソッドです。

あなたの人生、仕事、人間関係……、どんな状況であっても、なにか解決すべき問題が出てきたり、さらには自分のささやかなアイデアを大きく実現させたりしたいときにも、このメソッドが役に立ちます。たとえば、

「そもそも、何に悩んでいるのかさえ、わからない」
「新しいことを始めるのに、どこから手をつけたらいいのかわからない」

といった場合。そんなときこそ、このメソッドは絶大な効力を発揮します。

本書で哲学シンキングを習得すれば、言葉にもならなかったモヤモヤを筋道を立てて語れるようになったり、解決すべき問題の真因をつきとめ、適切に課題設定したりすることができるようになります。

ひとは、ハッキリと対象がわからないものに不安を覚えるものです。
解決すべき問題や、日々の悩みの大半は、問題を解く前に適切に課題設定することでスッキリするとともに、解決の糸口も見いだせるようになります。

でも……「哲学ってむずかしいんじゃないの?」「哲学に答えなんてないんじゃないの?」といぶかしく思う人がいたら、それは半分正しく、もう半分は間違っています。

哲学は、「考え方/思考」の総合学
実際、哲学は、どこまでも深く掘り下げて考えることができるので、掘り下げれば下げるほど、難易度は上がります。
その思考の根っこはどこまでも続いているので、その意味では、哲学は理解不能に感じられるかもしれません。

一方で、この世のあらゆるテーマについて、あらゆる手を使って掘り下げるのが「哲学」だとすると、哲学は、多くのひとびとに紡つむがれながら、2500年以上の時間をかけ、さまざまな「考え方」を生み出してきました。

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じつは、新しい考え方を見つけることによって、それまでの問題を別の視点から見つめることができるようになったり、より広い視野のもとで、解決困難に見えた問題が解消されたりします。

哲学は、長い歴史のなかで人類が開発してきた、問題解決のための道具箱でもあるのです。

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「問い方」を変えるだけで世界がひらける

哲学のもっとも重要な技法の1つは、「問い方」を変えてみるということです。

悩みや問題に直面したとき、ほとんどのひとはそれをどうやったら解決できるだろうか、と「答え」を追求するでしょう。

たとえば、「ほんとうのわたしは、何をしたいんだろう?」という疑問を抱いたひとがいるとします。
これもしたい、あれもしたいと、いろいろなやりたいことがあって、ほんとうに何をしたいかわからない場合。
あるいは、これもしたくない、あれもしたくないと、これといってやりたいことがなくて、ほんとうに何をしたいかわからない場合。

いずれの場合でも、なんらかの「解」を求めようとしがちです。

でも、そもそも「ほんとうのわたし」なんて存在しないとしたらどうでしょうか。
「ほんとうのわたしは、何をしたいんだろう」と、いくら自己分析してみても答えは見つかるわけがありません。たしかに、

A「これをしたいわたし」
B「あれをしたいわたし」
C「これもあれもしたくないわたし」

ABC、どれも等しく「わたし」です。
ここまでは、リアルに実感できる「わたし」です。
では、この世界のどこかにわたしがまだ知らない「ほんとうのわたし」という存在がいるのでしょうか? ん? どこに?

この場合、そもそも問いの前提、あるいは問いの立て方(問い方)じたいが間違っていそうです。

「ほんとうのわたしは、何をしたいんだろうか」と問うよりも、「そもそもほんとうのわたしなんて存在するのか」と問うほうが、どこか肩の荷が下りて、気負わず柔軟な発想ができる人もいるはずです。

だって「ほんとうのわたし」が存在しないのに探しまわっても、ただ徒労に終わるだけですよね。

ビジネスにおけるモノづくりだってそうです。

新しい自転車を開発するプロジェクトがあったとします。
たとえば「“これまでにない斬新で画期的な自転車”のアイデアを出してくれ」と言われても、そう簡単には出せるものではないでしょう。
いまある自転車のデザインをちょっとカッコよく変えたくらいでは、画期的とはいえませんからね。

でも、「“自転車”にまつわる問いを、なんでもいいから出してくれ」と言われたらどうでしょうか。
「そもそも自転車とは何か」「なぜ、自転車は足だけでこぐのだろうか」「腹筋や背筋も使って、こいだらいけないのか」「自転車は、移動する手段の乗り物なのだろうか」……。

こういった問いをひたすらあげて突きつめていくなかで、全身の力を最大限に使ってこぐ自転車をつくったってかまわないことに気づくかもしれません。
あるいは、移動手段ではなく、スポーツや娯楽のために使うのはどうでしょうか。

そうやって、まったく新しい自転車ができたこともあります。
下の写真は「FAZOM(ファゾム)」といって、ボートをこぐように、全身の屈伸運動を通して動かす自転車です。ぼくといっしょに哲学の会社を創業したメンバーの吉辰桜男が、自身の事業として開発・販売しています。

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これまでのペダルを回す駆動方式に「問い」を立て、人間に最大限の力を発揮させるには、フレームが人間の動きを制限してはならないというコンセプトのもと、つくられました。

また、たんに便利でラクな自転車ではなく、「全身のエネルギーを速度に変える」という体験と思想を軸に、独自の顧客を創出し、ロサンゼルスなどの一部地域で販売されています。

新しい市場をつくる製品を生み出し、独自の立ち位置を獲得するためにも、既存のモノに対して、問いを立てること、そしてその問いを深く洞察し、軸をつくりあげることはきわめて有効なのです。

これらに共通するのは、「問いの答え」を求める前に、問いの前提や問い方を見直してみることで、思わぬ視点を得られたり、グルグル空回りしていた思考を前に進めたりできるということ。
 つまり、ものごとの「そもそも」を問うことで、新しい気づきがあったり、答えが見つかったりします

ムズカシイ知識はいらない

哲学シンキングを実践するうえでは、最新のビジネスメソッドも、特別な哲学の知識も必要ありません。
哲学の知識はときにいろいろなヒントを与えてくれますが、「哲学的に考える」という点においては、さしあたり不要です。
実際、「知恵を愛し求める者」として有名な哲学者、ソクラテスの考え方が参考になるでしょう。

ソクラテスは古代ギリシャの哲学者。「よく生きること」を探求し、弟子のプラトンをはじめ、後世のひとびとに多大な影響を与えた人物です。
彼は「ソクラテス以上の知者はいない」という神託を友人を通じて聞いたのですが、自分が知者だなんて、まったく身に覚えがありませんでした。
そこで神託の真意を探るため、政治家や作家など、知者と思われるひとびとと問答をくり返すのですが、彼らはソクラテスに次々と論駁され、無知を暴露されてしまいます。

ここでソクラテスは、あることに気づきます。
一般的に知者といわれているひとびとは、博識であったり雄弁に語ったりするけれども、「善とか美とか、もっとも大切なことがら」について知らないのに知ったつもりになっている。一方、自分はそれらについて知らないことを自覚している、と。
これを「無知の知(自覚)」といいます。かのソクラテス自身でさえ、「善美なることがらを知りたいと希(こいねが)うひと」でしかなく、「知者」ではないと思っていたのです。

これは、あらゆるものごとを考えるときに重要な「心がまえ」の1つでしょう。「自分の知識を疑えるひと」「自分の無知を自覚し、ほんとうのところはどうなのだろうかと追究できるひと」は強いのです。

そもそも大学などにいる「哲学の専門家」と呼ばれるひとたちもみな、最初は哲学の素人でした。ですが、教員や先輩から哲学の手ほどきを受け、さまざまな考え方と接しながら、自分独自の思考を身につけてきたのです。

その考え方は冒頭でご説明したとおり、みなさんの想像をはるかに超え、実生活やビジネスで活用できてしまいます。

この本で紹介する「哲学シンキング」は、1人でもできますし、複数人のワークショップ形式でもできます。
哲学シンキングは、ぼく自身が哲学の論文を書いたり、哲学的な問題を考えたりするときに、いつも自然とやっていた手順を、誰でも真似できるようにした思考術。
その方法を使ってビジネスパーソン向けのセミナーで、いつもどおり司会進行(ファシリテート)をしていたら、企業のひとたちから「こんなに目からウロコの気づきが得られるとは思わなかった! すごいね! どうやっているの?」と注目されるようになりました。

そんなわけでいつしか、大手企業の組織開発やマーケティングリサーチ、コンセプトメイキングなどのプロジェクトで取り入れられるようになり、最近では「哲学シンカー ®養成・認定講座」というセミナー事業も展開しています。

「ⅠBM」や「東芝」「横河電機」といった企業のコンサルタント、デザインシンカー、デザイナーの方々が受講し、デザイン思考など、ほかのメソッドとも組み合わせながら、自身の仕事で活用されている方もいます。

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「A4の用紙とペン1本」を持って


プライベートでもビジネスでも、適切に課題を発見・設定し、問題解決に使える、この哲学シンキング。A4の紙3~4枚と、ペン1本でできてしまいます。
ポストイットもホワイトボードもいりません。
言葉では伝えにくく、絵に書いたほうがわかりやすいときなどに、まれにホワイトボードを使いますが、基本的には不要です。

もっとやり方に慣れてくれば、紙やペンがなくても、頭のなかでできるようになります。
人生や仕事で道に迷ったとき、どの道がベストか、スーッと明るい見通しをつけることができるようになります。それは自分オリジナルの「人生の羅針盤」をつくること。

とはいえ、「ソクラテスは1日にしてならず」。
哲学は、いわば「思考の筋トレ」です。
毎日たった10分でも継続的に鍛えることで始めて、強きよう靭じんな思考力を身につけることができます。

この本を読み終えたときにみなさんは、人生やビジネスの逆境を、自分自身でかるがると乗り越えていくための、究極のツールを手に入れることになるのです。

Column 01「哲学シンキング®」は、どこから生まれたのか?


“哲学”は、一般的にちょっと誤解されがちな言葉かもしれません。
しばしば、ある個人の人生観や価値観、信念、といった意味で使われることがあります。また、ソクラテスやニーチェをはじめ歴史上の哲学者を引き合いに出しながら、「自己啓発」や「お悩み相談」を目的にした人生訓や格言として、一部のセンテンスが切り取られて使われることが多いようです。

しかし、そういった“哲学”は、古代ギリシャに始まり2500年以上も紡がれてきた「フィロソフィア」としての「哲学」とは異なります。「哲学」は、理性(ロゴス)を通じて根源的な原理を探求する知の営みです。前提を問うたり、他者と対話したりして、誰もが納得するような考えを徹底的に追究します。

さまざまな哲学者の概念や学説を覚えることが「哲学」なのではなく、なぜそのような考えにいたったのか、ほんとうにその考えは正しいのかを思考することのほうが、より哲学的な態度といえるでしょう。

「哲学シンキング®」は、こういった哲学する思考法から、日々の生活やビジネスの現場で使えるエッセンスを厳選して抽出したメソッドです。プライベートな問題解決はもちろん、組織開発・チームづくり、マーケティングリサーチ、コンセプトメイキング、アイデアワーク、デザイン思考の補完などに活用できます。

……と、さらに具体的な「哲学的な思考」のメソッドが1冊になりました

いかがでしたでしょうか?

本書では、

●廃業の危機におちいった、おばあちゃんの和菓子屋を救うべく、孫の勘太くんが大奮闘! そこで、おばあちゃんが思いついた「あること」とは……?

●小さな水族館で働くスタッフたちが、お客さんを呼ぶ企画を考えた結果……!?

など、わかりやすいストーリーで、現場で活かせる実例を解説しています。

アマゾンの本の情報はこちら、ぜひチェックしてみてくださいね。

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