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手元に100冊の絵本を。「絵本選び」「絵本の読み聞かせ」で齋藤孝が実践する8つのこと

ドロシー・バトラー『クシュラの奇跡 140冊の絵本との日々』という本をご存じでしょうか。障害を持って生まれたクシュラが、絵本の読み聞かせによって、豊かな世界に開かれていく、感動的なプロセスが描かれています。
絵本の読み聞かせには、とてつもない力があります。

いろいろな早期教育が流行していますが、私は絵本の読み聞かせこそ、幼児教育の中心に据えるにふさわしいものと考えています。

読み聞かせ実践編

1.図書館で借りて“お試し”する

絵本の読み聞かせは子育ての基本であり、絵本は子どもの心の育成のための最良の教材です。ただ、実際にわが子に読み聞かせをしようと考えたとき、〝絵本選び〞に悩む親御 さんも少なくありません。

いちばん大事なのは子どもが好きな絵本、子どもが関心を示す絵本を選ぶこと。保育園や幼稚園に通っているなら、保育士やスタッフに「ウチの子はどんな絵本にハマっているか」「どんなジャンルの絵本に興味を示しているか」を教えてもらって、その絵本を買うという方法もあります。
また、子どもといっしょに図書館に出かけるのもおすすめ。どの図書館にもたいてい 「子ども絵本コーナー」があり、さまざまなジャンルの絵本がたくさん揃っています。

そこに行って、「どれを読みたい?」「どれが好き?」と子どもに聞きながら何冊かピックアップ。それらを借りてきて、家で読み聞かせをします。
借りてきたなかで、「これ、もう一回読んで」とおもしろがった絵本、興味を持って目を輝かせて聞き入った絵本を、家庭用に購入するのです。

これは私が子育てしていたときに自分で実践していた方法です。図書館に子どもと出かけては、そのたびに 10冊借りて(当時は10冊が貸出し上限でした)家で読み聞かせ、何度も読みたがった絵本を買うようにしました。

 「買ったはいいけれど、見向きもしない」では、せっかくの絵本も宝の持ち腐れになってしまいます。図書館を有効活用して購入前に好き嫌いを〝お試し〞すれば、絵本を〝書棚 の肥やし〞にしなくて済みます。

2.気に入った絵本は「買う」

「図書館で借りて、お試ししてから買う」と聞いて、「おや?」と思った方もいるかもしれません。わざわざ買わずに、図書館で借りれば十分なのでは、と思う向きもあるでしょう。
でも、絵本は買ったほうがいいというのが私の持論です。 なぜなら「いつでも手元にあって、読みたいときに読める」ことが大切だと思うからです。

幼稚園や保育園、図書館で借りてくる絵本と、購入していつでも家にある絵本とでは、その絵本の世界と子どもの距離感が違ってきます。借り物の絵本だと、子どもは心のどこかで「絵本の世界」と「自分」が〝くっついてる感じ〞を持てないものなのです。
今読みたいと思ったときに「じゃあ明日、借りてこよう」では、せっかくの意欲がしぼんでしまうかもしれません。読み聞かせの時期を過ぎて子どもが自分で文字が読めるようになったとき、自分から「もう一度あの絵本を読みたい」といいだすこともあります。そ のとき購入してあれば、すぐに「はい」と手渡すことができます。いつでも手元にあることが、子どもと絵本の世界との距離をグンと縮めてくれるのです

いまはネットなどで探せば、中古の絵本やリサイクルの絵本も見つかる時代です。もし経済的に余裕がないということなら、中古やリサイクルを利用してでも、子どもが気に入った絵本、くり返し読んでいる絵本は、ぜひ購入して〝自分のもの〞にしてあげてください。
また、親御さんが実家を探せば、もしかしたら、「おばあちゃんがママに読んでくれた絵本」が出てくるかもしれません。そうして親から子へ、子から孫へと受け継いでいくことができるのも買ったからこそです。自分のものにできるから、心の財産になるのです。 

3.反応を書き留める――絵本が「成長の記録」に

私が「絵本は買うべき」と考える理由がもうひとつあります。それは、買った絵本なら、 いろいろと書き込むことができるからです。
私も実践したことなのですが、読み聞かせたときに子どもが口にした言葉や見せたリアクションなどを、年齢や日付とともにその絵本に書いておくのです。 

「○年○月○日、○歳。この場面でこんなかわいいことを言った」「この言葉を読んだら こんな表情を見せた」「この絵のところで、コロコロと弾けるように笑った」――。
メモ書きレベルで構いません。読み聞かせのときに親御さんが感じた子どもの様子を書き留めておく。そうすることで、その絵本は子どもの〝成長の記録〟になります

幼児期の子どもが感じるままに発した言葉は、かわいらしいものやハッとさせられるものなど、大人の心に残るフレーズが多いもの。ただ聞いているだけではその瞬間で忘れてしまいますが、残しておけば、10年後、20年後、30年後にもとりだすことができます。
それもまた財産になります。

こうしたことができるのも〝買った絵本”だからこそ、なのです。 ただ、本編のページに直接書き込むと絵や文字の邪魔になりかねません。 私がオススメするのは、本の最後のページにある奥付と呼ばれる場所です。出版社の名前や著者のプロフィールなどが書かれたページ。物語に支障が出ないところに書き残すようにしましょう。

4.理想は200冊、最低100冊を揃える

幼児期の子どもを持つご家庭では、まず「家に100冊の絵本」を目標にしていただきたいと思います。10冊、20冊では「少ない」と考えたほうがいいでしょう。
100冊と聞いて「そんなに?」と驚かれるかもしれません。でも100冊はあくまで 最低限のライン。理想をいえば200冊くらいあってほしいと思っています。

ある調査では家庭の蔵書数と子どもの学力は比例する、つまり本がたくさんある家庭の子どもほど学力が高いという結果が出ています。
この傾向は、絵本と子どもの心の育成についても同じことがいえます。絵本がたくさん揃っていて、いつでも絵本の世界に手が届く環境が、子どもの想像力や創造力、好奇心を育んでいくのです。 

絵本、それも繰り返して何度も読みたい絵本が100冊あるのは、子どもが没入して体験できる〝ワールド〞が家庭に100あるのと同じこと。 

0歳から6歳ぐらいまでの間に100もの絵本への〝心の世界旅行〟を体験できれば、 子どもの心のなかはとても豊かになっていくはずです

また先に申し上げたように、読み聞かせ時の子どもの言葉や表情を書き留めておけば、 100冊の絵本は〝成長を記録した絵本アルバム〞として残しておくことができます。

子どもにとっても100冊にも及ぶアルバムは、「自分はこれだけの〝心の森〟を持っ ている」という証し。成長していくうえで自分を支えてくれる貴重な財産になるのです。
ですからぜひ、ご家庭に100冊の絵本を。

家に子どもが大好きな絵本が100冊以上あって、読みたいとき(読んでほしいとき) に読みたい絵本をあれこれ選ぶことができる。それだけで子育ての環境は「大丈夫」と いっていいでしょう。

5.ジャンルは幅広く――より広い世界との接点を

家に絵本を揃えるにあたって気をつけたいのが、同じような作品ばかりになってしまうことです。
家にある絵本が〝すべて同じテイスト〞になってしまっては、子どもの世界が広がりません。子どもの心の間口を大きく広げるには、画風、表現方法が異なる、より幅広い絵本の世界に触れさせることが大事です。

先に、絵本には一冊一冊それぞれ独自の世界があると書きました。もちろん、お気に入りの作家の絵本、好きな世界観の絵本を何冊も揃えるという選び方があってもいいでしょ う。ただ大事なのは、家の絵本を「その一色だけにしない」ということです。

子どもが気に入る絵本が基本ではありますが、それだけではどうしても作家やジャンル の偏りが出てくるでしょう。 
絵本のバリエーションを整えるのは、親御さんの大事な務めです。
新作もあれば歴史ある名作や定番もある。ディズニーもあれば、日本の昔話もある。地方の民話もある。アニメ風の絵もあれば、クレヨン画もある。切り絵や版画風の絵もある――。 

絵本を選ぶときは、いろいろなジャンルのストーリー、いろいろな画風の作家、いろいろな表現スタイルなど、できるだけ幅広く、バリエーションが豊富になるように心がけていただきたいと思います。

6.家族みんなで選んでバリエーションを広げる

絵本選びの偏りをなくしてバリエーションを広げるには、子どもが興味を示した作品だけでは限界があります。では、そのほかの絵本はどうやって選べばいいでしょうか。
まず必要なのは、親が選んであげることです。たとえば、お母さんやお父さんが「これ はおもしろそう」「子どもに読んであげたい」と思う作品。「文字が多くてわかりにくいかな」と思っても、子どもは絵を見て「おもしろい」と飛びつくこともあります。
まずは図書館で借りて試してみればいいのです。
子どもといっしょに図書館に行ったら、子どもは「読みたい本」を、親御さんは「読ませたい本」を選んでみてください。
また、親御さんがそれぞれに読ませたい絵本を選ぶのもいいでしょう。女親と男親では選ぶ内容も違ってきます。それだけでも絵本選びの幅にバリエーションが生まれます。  

おじいちゃんやおばあちゃんに選んでもらうのも一案です。親とは別の視点で選んでくれます。かわいいお孫さんのためなら喜んで協力してくれるでしょう。
選ぶ人が多いほど、選ばれる絵本も、選ばれるジャンルも多くなるのですから。
もっといえば、親御さん自身が好きな絵本、自分でも読んでみたい絵本を選ぶという方法もあります。子どもの頃に読んでもらって好きだった絵本もオススメです。
自分が好きな本なら、読み聞かせもより楽しくなるはず。親が楽しそうに読んでくれる と、それを聞く子どももうれしく、楽しくなります。

7.「名作」は押さえるべし

絵本には「名作」や「定番」と呼ばれる、世代を超えて多くの子どもに読み継がれてきた作品があります。なかには何十年も前に出版された古い絵本、100刷以上重版しているロングセラーもあります。
100冊の絵本を揃えていく際の基本として、やはりそうした名作絵本は外すことができません

たとえば、中川李枝子さん(文)と大村百合子さん(絵)によるロングセラー『ぐりとぐら』。1967年の発売から50年を超えてなお人気の、世代を超えて愛され続けている名作です。親御さんのなかにも読んだことがある人は多いはずです。
また佐野洋子さん(文と絵)による、猫が何度も何度も生き返る(輪廻転生を繰り返す)お話、『100万回生きたねこ』も40年以上読み継がれています。

こうした誰もが知っている定番中の定番、名作中の名作は、「読んでおくこと」「読み聞かせておくこと」に大きな意味があります

これまでもお伝えしてきたように、絵本の読み聞かせは「心と文化の伝承」でもありま す。世代を超えて愛され、文化として受け継がれてきた作品は読んでおいたほうがいい。 子どもの心が育つプロセスにおいて、「連綿と受け継がれてきた文化を心に刻む」ことが非常に大事なのです。

それに何十年も読み継がれてきたという歴史は、イコール、その作品が子どもの心の育成にふさわしいという「信頼の証し」と考えることもできます。
子どもにしても、「お友だちはみんな知ってるのに、自分は読んだことがない」となるのは寂しいもの。絵本選びの基本として名作や定番は押さえておきましょう。

8.お気に入りは何十回でも読む

「これ、もう一回読んで。もう一回、もう一回」
同じ絵本の読み聞かせを、何度も繰り返しせがまれた経験はありませんか。 大人のみなさんでも、気に入った本を何回も読み返すということがあるでしょう。
ストーリー展開も結末のどんでん返しもすべて知っているのに、何度でも読みたくなる。
そんな作品と出会うことは読書の楽しみであり、喜びでもあります。
その気持ちは小さい子どもでも変わりはありません。
楽しくておもしろくてたまらない絵本に出会ったら、何度でも読んでほしい。その楽しさやおもしろさを何度でも味わいたい。そう思うのが自然な感情なのです。
私もよく経験するのですが、何度読んだ本でも、新しい発見があったり違う解釈に気づいたりと、繰り返し読むことで得られることはたくさんあります。
子どもだってそう。何度も同じ絵本に触れながら、新しい楽しさや違うイメージを見つけだしていくことも、心の成長の大切な糧になるのです。

読み聞かせる側の親御さんにしてみれば、何度も同じ話ばかりだと飽きてくるかもしれ ません。でも、何度でも読んであげてください
何度も何度も読んでほしくなるのは、いい絵本だから。 「もう一回読んで」は、子どもが「大好きな1冊」と出会えたサインです。その1冊を きっかけに本そのものへの興味が沸いて、読書好きな子どもになっていく兆しともいえます。
大げさではなく、その子の人生の財産になる1冊なのです。
絵本のストーリーそのものは何度読んでも同じですが、それを聞いている子どもの様子や表情、反応は、少しずつ変化しているかもしれません。それを見つけるのもまた子育て のひとつと考えて、子どもの「大好き」に寄り添ってあげましょう。

(齋藤孝『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』より。本書では著者が実際に所有する絵本100冊のリストも公開してます)

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