「だまされた」そう遺して死んだ父の戦争の足跡を辿る旅。韓国・中国・ロシアへ
『桶川ストーカー殺人事件 遺言』や『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で知られるジャーナリスト清水潔さんの新刊が5月21日発売となります。
タイトルは『鉄路の果てに』。
実家の本棚で見つけた「だまされた」という亡き父のメモ書き。93歳で大往生した父は無口で、昔話はほとんどしなかった。メモに添えられた地図には日本列島からユーラシア大陸に向けて、赤い線が足されていた。
千葉→下関→釜山→ソウル→ハルビン→バイカル湖畔まで。
それは、父の昭和17年から23年までの足跡だった。
いったい、いつ、これを書いたのだろう。
病室に横たわる今際の父に、戦争体験について質問を並べたことがあった。
「思い出したくないんだ」
少しいらだったように言うと、腕を組んで天井の一点をじっと見つめた父。それから1ヶ月後、父は逝った。
「だまされた」
父はいったい何を言いたかったのだろう。
父が遺したこの線を、私は辿ってみたくなった。
それが果たして「取材」なのか、何なのか。それはわからない。
それでも私はその旅に出ようと思った。
鉄路の果てに、いったい何が待っているのか。
ここで紹介したのは、『鉄路の果てに』序章の一部を要約ダイジェストしたものです。
著者の清水さんが韓国・中国・ロシアを旅したのは2019年1月末から2月にかけてのこと。実家を整理している時に見つけた父のメモ書きと地図(下記写真)を手掛かりに、その足跡を追いかけるかのように、ソウルに入り、中国のハルビンからシベリア鉄道でロシアのイルクーツクまで向かいました。
75年前に父が経験した戦争を辿る旅。国はなぜ戦争をするのか。戦争はどこから始まるのか。
本書の内容をもう少し知っていただくために、目次もご紹介しましょう。
目次
序章 赤い導線
1章 38度線の白昼夢
2章 ここはお国を何百里
3章 悲劇の大地
4章 ボストーク号
5章 中露国境
6章 シベリア鉄道の夜
7章 抑留の地
8章 黒パンの味
9章 バイカル湖の伝説
終章 鉄路の果てに
旅を続けながら、著者のジャーナリストとしての原点も見えてきます。
現在の所属は日本テレビですが、ジャーナリズムの世界に入るきっかけは父から譲り受けた一台のカメラでした。その後、雑誌記者・テレビ記者として多くの事件・事故取材に携り、社会を動かす調査報道に身を投じてきました。
著者プロフィール
1958年東京都生れ。ジャーナリスト。日本テレビ報道局記者/特別解説委員、早稲田大学ジャーナリズム大学院非常勤講師など。新聞社、出版社にカメラマンとして勤務の後、新潮社「FOCUS」編集部記者を経て日本テレビ社会部へ。雑誌記者時代から事件・事故を中心に調査報道を展開。著書に『桶川ストーカー殺人事件―遺言』(「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」「JCJ大賞」受賞)、『殺人犯はそこにいるー隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(「新潮ドキュメント賞」「日本推理作家協会賞」受賞)などがある。また、著書『「南京事件」を調査せよ』の元となるNNNドキュメント’15「南京事件―兵士たちの遺言」は「ギャラクシー賞優秀賞」「平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞」などを受賞。
著者自身の家族の話から始まる本書には、この国でこれから未来をつくる人すべてに関わることが書かれています。
5月21日全国発売です。
*本書のゲラを発売に先駆けて読んでくださる書店員の皆様を募集します。興味を持っていただけましたら下部コメント欄までご一報ください。