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世界初のコンピュータをつくったのは、誰か?【#頭のいい人のセンスが身につく世界の教養大全】

――そういえば、誰だろう?

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コンピュータの父!?

「つくった」という言葉がクセモノだ。
イギリスの数学者チャールズ・バベッジ(1791 ~ 1871)は「コンピュータの父」として有名だが、その功績は実際に計算機を「つくった」ことではなく、世界初の計算機を考案したことだ。

彼が設計した「バベッジ・エンジン」とまったく同じ規格の装置が、彼の時代に調達可能だった材料だけを使ってはじめて完成されたのは、2002年だった。
長さ3.3メートル、重さ5トンもある大型マシンには8,000個の部品があり、建造には17年を要したという。

現在、このマシンは「チャールズ・バベッジの階差機関」としてロンドンのサイエンス・ミュージアムに展示されている。

19世紀、大英帝国のすべての事業が数字の計算によって成り立っていた。銀行業務から輸送業務まで、通商のあらゆる局面が正確な「数表」(訳注:電卓やコンピュータ以前に、計算を簡略化し迅速に結果を求めるために用いられていた対数表や関数表などの総称)に依拠していたのだ。

ここに誤りがあれば、たちどころに金を失い、引いては命まで失いかねない。ところが、当時の数表は大勢の人間の手で流れ作業的に単純な計算をする方法で作成され、そのために間違いが極めて多かった。
これに代わるマシンをつくろう、数表作成の機械化をライフワークにしよう、バベッジがそう決心したのは、1821年だった。

しかし、あまりにも膨大な(間違いだらけの)数表にいざ直面すると、彼は同僚に向かってこう叫んだという。「こんな計算など、いっそ蒸気によって実行されていればよかったものを!」

バベッジは優秀な数学者だったが、世渡りは苦手だったようだ。路上のミュージシャンたちに我慢がならないときも、思うままに罵声(ばせい)を浴びせた結果、かえって集団での報復を受けるはめになった。

ロンドン中心部にあった自宅は、昼夜を問わず騒音による一斉攻撃に遭い、近隣の商店には彼への嫌がらせのプラカードが吊るされた。せめて政治家たち相手にうまく立ち回れば、仕事に必要な資金を調達できたかもしれないのに、バベッジはそれもできなかった。

生活に有用な数々の発明も成し遂げ、特許をとったにもかかわらず、バベッジは不遇のうちに死を迎え、世間から忘れ去られていく――彼のもっとも画期的な発明品、のちの時代にコンピュータと呼ばれるようになった文明の利器を、資金不足のために自分の手で完成させられなかったばかりに。

彼の死後つくられた、パンチカード方式のプログラムによって制御されるコンピュータは、メモリ(記憶装置)とプリンター(出力装置)も搭載した高機能機器である。

世界で初めてプログラミング言語をつくったのは……

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この最初のプログラミング言語を開発したのは、イギリスの伯爵夫人エイダ・ラブレス、詩人ジョージ・ゴードン・バイロン卿の独り娘だった。
彼女はバベッジに師事し、その功績を彼以上に深く理解していた。1840年代に、彼女はすでにコンピュータがいつの日かチェスの対戦相手となり、音楽も奏でるようになると予見していたという。

バベッジの設計図をもとに、1853年、スウェーデン出身の技師ジョージ&エドワード・シュウツは、バベッジ自身が「ディファレンス・エンジン(階差機関)」と名づけていた装置の原型をはじめて完成させた。
この父子は、実際に動く最初のコンピュータを建造しただけではなく、完成した2機の売却も実現させた――1機はニューヨークにある天文観測所へ、もう1機はロンドンの登記所へ。いずれも、グランドピアノほどの大きさだったという。

しかしながら、この2機も厳密には最初のコンピュータとはいえない。1900年、なにやら錆びた人造物が、エーゲ海のアンティキティラ島沖で発見された。現在、これは「アンティキティラの機械」と呼ばれ、天体運行を精密に計算するために2,000年も前につくられた歯車式機械であると考えられている。

われわれが今「コンピュータ」と呼んでいるものは、もともとは「計算機(コンピューティング・マシン)」と呼ばれていた。そもそも19世紀中ごろまでは、「コンピュータ」といえば、単に「なにかの計算を行った人」のことだった。

そういうわけで、誰が最初のコンピュータをつくったのかという質問への答えは、正確には「コンピュータの親たち」という他ないだろう。


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