【3月新刊】『だからあれほど言ったのに』内田樹・著(マガジンハウス新書)政官財から教育界まで、日本型「先送り」のツケ。この国の不出来なシステムを悪用するか、逃げ出すか、それとも……
失われた30年で「不自由な国」になってしまった日本。新自由主義の迷走ぶり、経済格差や税の不均衡、少子高齢化、低レベルな政治、大手企業の不祥事など問題が山積となっています。そして、社会全体には諦念が蔓延しており、私たち一般市民は不自由さをも感じている状況です。
本書の冒頭で、著者は2つ問題提起をしています。
ひとつめの問題は「政治はこれからもまったく変わらない」という諦念が広がると、国民の中から「この不出来なシステムをどう生き返らせるか」よりも、「この不出来なシステムをどう利用するか」を第一に考える人たちが出てくること。
このシステムにはさまざまな「穴」があります。それを利用すれば、公権力を私的目的に用い、公共財を私財に付け替えることで自己利益を最大限化することができるからです。
ふたつめの問題は、現在の日本社会から「大人」が消えつつあること。
「大人」というのは、個人単体についての属性のことではなく、集団的な結果を検証して、「あの人は大人だった」と事後的・回顧的に確定される。子どもたちの知性的・ 感情的な成熟を支援した人です。
いくら年を取っていても、社会的地位があっても、物知りでも、その人がいるせいで周りの人たちの成熟が阻害されるなら、その人は「子ども」でしょう。
<本書の内容>
●“大人”が消えている ――日本の危機
● アメリカの顔色をうかがう日本政府の悲哀
● 属国の身分を利用するか、そこから逃げ出すか
● 食文化は「経済」ではなく「安全保障」
● 日本の「ダメな組織」の共通項
● 「21世紀の囲い込み」を目指す、現代の資本主義
● 村上春樹が描く「この世ならざるもの」
● 自然と文明社会の「境界線」を守る
● 人生は「問題解決のため」にあるわけではない ……etc.
この国をどう立て直すのか、この国で我々はどう生きるのか――。
ウチダ流「日本人論」の最新刊です。ぜひ、ご一読ください!
(編集T)