春夏秋冬の「おいしい」を求めて、阿川佐和子さんとタサン志麻さんの料理談義に耳を傾けたら……
この質問は、阿川佐和子さんがタサン志麻さんとの対談中に投げかけた一言です。
みなさんはどちらですか。
私はどちらかというと「前」かな。
お店でいうと、メニューを選んでいるとき、注文して料理が出てくるのを待っているとき。家なら、スーパーで買い物しているとき、キッチンからいい匂いがしてきたとき。テレビや雑誌で紹介されたものを「今度食べに行こう」とメモしているときなんかもワクワクしますね。とはいえ、食べ終わって、「あー、おいしかった」という幸せもありますし、食の楽しみは尽きません。
さて、今日はそんな食いしん坊の心をくすぐる一冊をご紹介させてください。題して『菜箸でフレンチ 春夏秋冬のごちそうレシピ』。この本は、阿川佐和子さんとタサン志麻さんによる料理本なのですが、料理好きで知られ、食エッセイもすこぶる楽しい阿川さんと、元フレンチシェフで料理専門の家政婦として大活躍されている志麻さんが出会ったら、どんな料理の話で盛り上がるのだろうと、妄想し続けること数年――。ともにお忙しいふたりのスケジュールが合うかどうかが心配だったのですが、念願かなって、春・夏・秋・冬と1年かけて取材させていただきました。
これが本当に面白かった。今回の本は、阿川さんの好みを探りながら、志麻さんが料理をつくるという段取りだったのですが、初回の春編で「筍」「セリ」「うど」「ふき」……というお題(阿川さんからのリクエスト)がきて、私は「うーん」と頭を抱えました。いかにも和の食材。「志麻さん、昔ながらのメニューしか思いつきません」と勝手にドキドキしていたのですが、さすが志麻さん。昭和生まれのがちがちの頭では考えられない、簡単でおしゃれなフレンチテイストのメニューを次々と提案してくださり、実際に料理を前にしたときには目が潤みました。
次々繰り出される志麻さんメニューに対して、阿川さんは「これ、どうやって作るの?」と質問攻め。好奇心全開で味見をし、毎回、家に帰って早速トライしてくださっているようでした。
対談パートでは、さすが阿川さん。豊富な食の体験から次々と思い出の味を再現してくださり、何度「おいしそう!」と声をそろえたことか。ご友人に教えてもらったというホタテのスパゲティは、ぜひ真夏に阿川さんの話を思い出しながら作りたいものです。
――と、エピソードは尽きませんが、最後にもう一つだけ。
今回、単行本化に当たって、おふたりに文章を寄せていただいたのですが、タイトルの「菜箸でフレンチ」は、阿川さんが志麻さんの姿を描写したところから取っています。私が志麻さんに対して感じていた印象を、的確な表現でまとめてくださっていて、「ぜひタイトルに」と相談しました。
特別な道具や材料がなくても、気楽にフレンチを楽しめることが伝われば嬉しいです。
追記
本書には阿川さんの手料理も紹介しています。「プロの前で緊張する」とおっしゃっていましたが、お料理上手の噂は、本当です。手際よく一品作ってくださいまして、みなでおいしくいただきました!
(担当S)
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