最初に夜を手放した__a-4_のコピー

Twitter3万「いいね」だけを頼りに、出版にこぎつけるまで。「後半、書き足すことができますか?」

『最初に夜を手ばなした』メイキング #2

夏が始まる。

まず、版元を探しだ。出版社の編集者と違って、フリーの編集者は出版社を選ぶことができる。と同時に選ばれなくてはいけない。後者のほうが圧倒的に分が悪い、気がする。企画書を作って読んでくれた編集者が興味を持ったとしても、企画会議という関門がある。出版社によって、1回のところもあれば、4回ぐらいあるところもあるし、月イチだったり週イチだったり。新人の著者の場合、企画会議のとてもハードルが高い。なにしろ、データがない。本にして売れる根拠はどこにあるのか。熱意だけでは通らない関門なのだ。手元にあるのは、3万以上の「いいね!」がついていたということだった。

とりあえず、企画書を書いた。で、椿さんに送ってみた。彼女がどうしたら読みやすいのかはわからなかったが、善は急げだ。出版するとはどういうことか、印税はどういう形で支払われるか、制作にはどんな過程があってどのくらいの時間がかかるか、などなど。なにしろ、彼女にとってはじめての本だ。

JRPS(日本網膜色素変性症協会)の方にも会いに行った。まだ版元も決まっていないけれど、出版が決まったら監修のご協力をいただけますか、とお願いした。医療監修のほうがいいと思うので考えておきましょう、と快く承諾してくださった。

いくつかの出版社をあたった。いちばん内容に興味を持ってくれたのがマガジンハウスの瀬谷さんだった。Twitterのフォワー数だとか、オールカラーの原価計算だとか、どこの棚に置くのがいいかだとか、そういう現実的な問題も検討したのだろうけれど、どうすれば企画が成立するか考えてくれた。

「後半、描き足すことができますか?  今のままだと、絶望からどういうふうに回復していったかが弱い。そこ、描けますか?」

なるほど。それは確かにそうだ。

椿さんにメッセージを送ってみると、9枚のラフが送られてきた。

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スマートフォンか……。

椿さんにとって、スマートフォンは「世界」をもう一度取り戻すための「魔法の杖」だったのかもしれない。

この本には、椿さんの患う「アッシャー症候群」が老化現象の先取りだということから、「今を後回しにするな」という強いメッセージがあるほかに、もう一つの側面がある。それがこれから描き足す後半だ。

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「企画が通ることを祈っています」

椿さんは、Twitterでそう返信してきた。


そして、お盆休みを前に、企画が通る。

タイトルは、「最初に夜を手ばなした」になった。

最初に夜を手放した (a-4)

(つづく)

『最初に夜を手ばなした』メイキング #3こちら

文・松山加珠子
(「月刊カドカワ」副編集長、「角川つばさ文庫」編集長、「カドカワ・ミニッツブック」(電子書籍)」編集長を経てフリーに)

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