清水潔『鉄路の果てに』書店員の皆様のコメントを紹介します(Part1)
「だまされた」亡き父が遺したメモを手掛かりに、気鋭のジャーナリスト清水潔が戦争を辿る『鉄路の果てに』。読んでくださった書店員の皆様のコメントPart1を紹介します。
内容紹介についてはこちらを、写真で巡る韓国・中国・ロシアの旅はこちらを、冒頭8000字の試し読みはこちらを、「本には無いまえがき」はこちらを、動画での著者インタビューはこちらをご参照ください。
大垣書店豊中緑丘店・井上哲也さん
良い戦争、正義の為の戦いなどある筈が無い。
戦争は何時も、非常で無情で利己的だ。
そう、国を挙げて。
本作は気鋭のジャーナリストである清水氏が父の遺した衝撃的なメモを紐解く形で、日中戦争の闇を辿って行くルポであり、当時の記憶を失わない様に後世に伝える為の歴史ドキュメンタリーだが、現在のユーラシア大陸を伝える旅行記としても秀逸である。
知られざる時が白日の元に現れて来る時、著者の胸中に宿る想いはとても深い。
歴史は消えない。
事実は無かったことや隠し立てする事は出来ない。
今を生きる我々は過去に学び未来に活かして行く義務があるのだ。
本書は学び知るための、貴重で必読な一冊である。
大盛堂・山本 亮さん
日々生活していても見逃し気付かない昔の出来事。だが繋がれた鉄路により、過去をたぐり寄せて現在と繋がっていく。どこまで自分たちは縁があった人間と共有できるのだろう。知ることの勇気と大事さが、普段着の文章からあふれ出てくるようだった。
文教堂北野店・若木ひとえさん
父親のメモにあった「だまされた」の文字。
普段より騙されてたまるかという信念のもとに取材を重ね、事実をおいかけているご自身にとって、重い言葉だったに違いありません。
相方の青木センセイと共に、鉄路で彼の地へ向かう旅。こう言っては叱られるかもしれませんが、楽しかったです。青木センセイが加わると雰囲気が変わりますね。
これはさて置いて、知ろうとしないことの罪を常に問いかけてくださる清水さん。
鉄路の果てから、生家の消滅。何かを失っても得るものは必ずあります。時々、「知ろうとしないことは罪だよ」と私たちに諭してください。
フタバ図書GIGA上安店・新竹明子さん
<シベリア抑留の歴史を紐解く1冊>
なぜに日本は”かの地”を求め、なぜに多くの日本人が犠牲となり、捕虜となったのか。
父親の真の思いを追い求めたい!父親に近づきたい!そんな想いが伝わってきました。
『知ろうとしないことは、罪なのだ。』
正しくこの一文に尽きます。
シベリア鉄道の周辺をめぐる現状をのぞき見ることが出来ました。
今、この不安定な時代だからこそ、平和な未来へとつなげるために手にとって欲しい1冊です。
精文館書店中島新町店・ひさだかおりさん
(「書店員レビュー」より転載させていただきます)
文庫Xでお世話になった清水潔さんのシベリア旅エッセイは、父親の残したメモをスタートに、自分が今まで知らなかった父のこと、戦争のこと、そしてシベリアのことをたどっていく。
父親の残した「だまされた」というメモ。重くなりそうなテーマを抱えたこの旅は以外にも軽やかで楽しい。
この旅に気持ちよさという彩を添えてくれたのは、同行者である作家青木俊さん。
ロシアに何度も行ったことのある青木センセイのアドバイスと度胸と知識があってこその、この旅。最高の同行者は最高の旅を作るんだな、としみじみ。
日本と大陸の関係、日清日露戦争、第二次世界大戦、七三一部隊、南京事件、シベリア出兵、敗戦、シベリア抑留…本当に、どこをどうとっても楽しい話はない。世界が犯してきた罪のその足跡をたどる鉄路。
鉄道というものが果たす役割の大きさ、その存在の意味。
希望や命を運ぶ鉄道の終着駅が絶望と死である「戦争」のそのおぞましさも目の当たりにする旅。
そのひとつひとつと、父親の足跡とを自分の中で消化していく。多分一人旅であったら続けられなかったのではないか。豪快にウォッカを飲みながらわははわははと笑い飛ばしてくれる青木センセイの存在が冷たい旅に温かさをもたらしてくれている。あぁそうか、もしかすると青木センセイはわざとそんな風にしていてくれたのかも。
なんて考えながら、傑作『潔白』の表紙のような写真を撮ってくれという青木センセイのリクエストに応えて撮った一枚が、どんな風だったかを読んで思わず吹き出してしまった。いや、それ見たかった…
全体的に軽やかに楽し気に仕上がっているこの旅の一冊が、実はものすごくたくさんの重く深い事実を含んでいることに読み終わってしばらくしてから改めて気付くだろう。
私たちが生きている今、どんな歴史の上にこの時間が成り立っているのか、誰から、何を受け取ってきたのか、それをゆっくりと考えたい。
皆様、お読みくださり、そして感想をお寄せくださいまして、ありがとうございます!!
*アマゾン以外はこちらより。